最初にマンションの大規模修繕(改修)工事で一般的になった設計管理方式の流れを見てみましょう。
マンションの大規模修繕工事を実施する際は、管理組合が主体となって理事会とは別に修繕委員会を設立して体制を準備する場合があります。大規模修繕は調査診断からはじまり、設計、修繕工事を経てアフター点検までを行っていきます。なお、ここで解説するのは工事を行う施工業者とは別に設計事務所やコンサルタントに設計監理業務を依頼する「設計監理方式」による進め方をの例です。
まずは、マンション大規模修繕工事の体制作りから始めます。管理組合において大規模修繕工事に向けた専門委員会(修繕委員会)を設置し、過去の経験者や建設業関係者などのほか希望者を募集するなどしてメンバーを選定します。理事会メンバーが修繕委員会のメンバーを一部兼ねると理事会と修繕委員会の意思疎通がよくなります。理事会を経て総会を開き、長期修繕計画に基づいた今回の大規模修繕工事の概要を報告、確認し、方針を決定します。修繕委員会は理事会の諮問委員会的な立場になります。
次に、設計監理業務を依頼する設計事務所やコンサルタントを募集します。書類審査の上、ヒヤリングで検討して結果1つに絞り「設計監理業務委託契約」を締結します。コンサルタントが決まると修繕委員会の進行や大規模修繕に関するアドバイスはコンサルタント(監理者)が行います。
次はマンションの建物の不具合傾向、劣化状態を探る段階に入ります。建物の現状を調査します。コンサルタント(監理者)が建物の調査診断、全住戸アンケート調査などを実施して、問題点などをリストアップしていきます。
マンションの仕様、現在の状況をチェックした上で診断報告書などを作成、また結果を説明会などで報告し、修繕方法や工事の優先度に関する提案を行います。
コンサルタント(監理者)がマンションの現状に合わせて修繕箇所や修繕方法などを検討します。調査診断の結果をもとに大規模修繕の工事内容、範囲、仕様を決定し概算金額書をコンサルタント(監理者)に作成提出してもらいます。
また、それに合わせて資金計画についても確認し、マンション大規模修繕積立金からの支出で充当できるのか確認します。もし、マンション大規模修繕積立金が不足している場合は工事の優先順位をつけて修繕積立金内に収める努力をします。しかし、それでも不足する場合は区分所有者からの一時金徴収や金融機関からの融資についても検討します。
計画が固まったら、監理者が大規模修繕工事の具体的な仕様を設計します。続いて、工事業者=施工業者を公募し、プレゼン・入札などを経て選定します。監理者は施工業者が提出した見積書を精査し、プレゼンやヒアリングを通じて専門家の立場からその内容を検証し、選定について管理組合にアドバイスを行います。
管理組合が施工業者との間でマンション大規模修繕工事請負契約を締結します。準備期間を経て着工へと進みます。工事実施にあたっては住民工事説明会を経て施工開始となります。
コンサルタント(監理者)は工事監理業務として設計した仕様通りに工事が進捗、実施されるかどうかをチェックします。工事中に問題や不具合が発生すればどのように対応するかを管理組合へ報告・変更提案を行い、管理組合が協議の上、決定します。
監理者は終了した工事について検査を行います。工事の実施内容について、マンション大規模修繕工事の設計と照らし合わせて検査を行います。管理者は工事監理記録を整理して提出、さらに今後の定期的な検査に立ち会い助言を行います。
設計管理方式の大規模修繕工事は、基本的に以上のような流れで行います。大規模修繕工事は、準備段階を含めれば2年以上かかることもあるので、理事会や専門委員会のメンバーの過度の負担とならないように管理組合の理解が必要となります。
マンション大規模修繕工事の責任施工方式とは、大手ゼネコンや大規模修繕の専門業者など、大規模修繕工事を行える工事会社に、設計と工事をすべて任せる方式のことです。また施工を中心とする会社以外にマンションの管理会社による責任施工もあります。
悪徳コンサルがマスコミで話題になって国土交通省も調査に乗り出してからは設計管理方式が主流だったマンション大規模修繕(改修)で責任施工方式も検討されるようになりました。
責任施工方式は業者から提出される見積もりや修繕計画の内容を元に、管理組合が工事業者を選びます。
責任施工方式では、マンションの管理会社に依頼して管理会社主導で工事を進めることも可能です。
しかし、管理会社主導のため施工は管理会社が選んだ工事会社が行うことになります。管理組合やマンションの住人にとって予算や作業内容が本当に適切かどうか見極めが難しくなる恐れがあります。
マンション大規模修繕工事の「設計監理方式」とは、修繕計画、工事業者選び、工事監理を建築士や設計事務所に任せ、工事のみ、別の工事業者に依頼する方法です。
マンション大規模修繕工事が必要な箇所や工事計画を、専門の建築士に見てもらうことができ、工事を行う業者の安全性や信頼性も、建築士目線で確かめてもらうことができます。
そのほか、工事業者との打ち合わせや補修計画をマンション管理士に任せ、建築士には設計部分のみを依頼する方法もあります。
現場での工事監理も、設計事務所やマンション管理士などが行いますので、第三者の目で手抜き工事を防止する効果もあります。
ただし、よい工事を行えるかどうかは、依頼する設計事務所次第です。昨今、悪徳コンサルによる不正が話題となり設計管理方式が第3者の公平性を担保するものとは限らない場合が発覚しました。
責任施工方式では、すべての作業を一貫してひとつの工事会社に任せることになります。
そのことが、メリットにもデメリットにもなりますので、設計監理方式としっかり比較して、どちらを選ぶべきか判断しなくてはなりません。
責任施工方式の主なメリットは、以下の2点です。
責任施工方式では、マンション大規模修繕工事の開始から終了まで、ひとつの工事業者に任せることができるため、設計監理方式のように、設計と工事を行う会社が分かれません。
また、工事会社と直接やり取りできるため、「打ち合わせの内容と、実際の工事内容が違う」といった食い違いを防ぎやすくなり、管理組合の希望も工事に反映されやすくなります。
一方、設計監理方式では、建築士や設計事務所に修繕計画を委ねなくてはならず、建築士と意思の疎通が取れなければ、思うような修繕にならない恐れがあります。
設計監理方式では、修繕工事の費用だけでなく、建築士へのコンサルタント料も発生します。
コンサルタント料は、修繕工事費用に対して約5~10%と、決して安い金額ではないため、予算があまり捻出できない時は、大きな負担になる恐れがあります。
責任施工方式では、設計料やコンサルタント料が発生せず、純粋に工事会社への支払いのみが発生します。
責任施工方式には、管理組合の負担を大きくしてしまう、以下のデメリットがあります。
責任施工方式のデメリットは工事会社を自分たちで探さなくてはならないことです。
膨大な数の工事会社から見積もりの妥当性や実績、提案力などを比較しなければなりません。特にマンションのような大型建築物の修繕・改修であれば多くの手間と時間を要することは言うまでもありません。
ただし、設計監理方式では監理者がアドバイスして管理組合が選んだ工事会社が、監理者と談合して都合のよい見積もりを作るケースもあります。そのため業者選びを自分たちで行うことは必ずしもデメリットになるとは限りません。
マンション大規模修繕工事の実績を持ち信頼できる工事会社をまずは複数ピックアップします。もしくは建設関係の専門新聞などで公募して、その中から限定して見積もりをとることが打ち合わせの負担を軽減するためのポイントです。
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